「ほれ、この中から、探し出すんや」
「この中からって、この」
「そうや、この浜全体や」
この広範囲の、膨大な量の小石の中から、ヒスイを探す、のか?
「あの、ヒスイって、きれいなんですよね?」
「そうや」
「ここにある石、みんなきれいなんですけど。・・・せめて、そこらにごろごろ転がっているという、お宝級じゃないヒスイの見本を」
「アホか、キツツキは。そんなん、言葉の綾に決まってるやないか」
「あ、綾なんですか・・・」
あたしは、アホ、かもしれない。
策作じいさんの言葉を鵜呑みにするなんて。
「そうや、綾や。けどな、」
思わせぶりに、言葉をためた後、策作じいさんは、一気に言葉を解き放つ。
「このぎょうさんある石の中に、ヒスイは隠れてるんや。ごろごろとはないけどな、10万個に1個くらいはあるはずや。な、キツツキ、5億年前の石をそこから探し出すんやぞ。ロマンやないか? ロマンやろ?」
と、問われても、あたしには、返す言葉が見つからない。
とにかく、探してみよう、根気よく。
策作じいさんについて、波打ち際を歩きはじめる。
さっき見かけたあの少年が、時折、頭をよぎる。
けど、でも、しばらくは、あっちに置こう。
角張っていて、比重があって、触るとすべすべ滑らかで冷たくて、白っぽくて、きらきらしている、策作じいさんのロマンを探す。