「落ち着いて、安達ケ原さん」
「あ、あたしは、とても冷静だ!」
「ぼくは、怪しいものではない」
「ふんっ! 変態は、自分では自分のこと、怪しいものとは思ってないんだ。だいたい、怪しくないものが、なぜ、ここにいる?」
「それは、・・・。電気が煌々と点いていたので、消灯に・・・」
「消灯に! そんな言い訳は通用しない! それに、女子の寝室に忍び込んでおいて、どの口が言うんだ、怪しくないって!」
「・・・ごめん、女子だとは思わなかった」
「女子だと思わなかっただと?」
「ああ、キッパリと」
話していると、怪しくはないようだけど、失礼な奴だ。
「キッパリと、とまで言うか? やっぱり、成敗してくれる!」
「信じてくれ。誓ってもいい。ほんとに、女子だと思わなかった」
「いま、誓ったか?」
知らず知らず指が鳴る。
「ああ、神かけて!」
神にまで、かけてしまったのか。
襲ってこないから、こちらから手出しはしないが、
「失礼千万!」
しまった、足が出た。
しかし、相手は、素早い。
しかも、冷静だ。
足蹴りかわし、電灯のひもをひく。
「わっ・・・」
「ぼくは、ここの者です」
「・・・あっ、はい」
ぐーっ、ぐるるる
「んっ、なに?」
「なんでも、ありません」
ぐーっ、きゅるるる
「ソーメン、食べる?」
「・・・はい」