「ソーメンのびるよ」
賢作さんの声は優しい。
「・・・あのう、先ほどは、失礼しました」
とわびを入れ、先ほどのことは忘れてほしいと願いつつ、ここに泊まるに至った経緯を話す。
といっても、『魂送り』とか『お精霊舟』とか『お曳舟』とか、禁句に繋がりそうな話は抜くから、策作じいさんに出会い、
「ヒスイを探す手伝いをするために、ここに泊まらせてもらっています」
なんて、嘘ではないが、真実とはかなりズレのある話にはなる。
けれど、話していると、気が紛れ、さっきの無礼が、あっちに置けるような気も、してこないこともない。
「そうか、だから、ここに」
「はい」
「ぼくは、」
「あっ、知っています。策作さんから聞いています」
「えっ? ぼくのことを? いつ、聞いたの?」
「今日の朝、お仏間で。ですから、ゆっくりお過ごしください」
「そう? わかった。安達ケ原さんもゆっくりしていくといいよ」
賢作さんの声は、優しく響く。
思いやりに満ちている感じが、する。
引き締まった頬の線が、笑うと、やわらかく変化して、胸が、・・・痛い、でもない、変な感じだ。
ほんとに、・・・なぜ、賢作さんは、ユーレイなんだ!
ソーメンを作ってくれたり、一緒に食べたり、こんなにリアルに存在してるのに・・・。
「明日も、探すんだろ?」
「はい」
「では、早くやすんだ方がいい」
「おやすみなさい」
神様、どうか、「この変態!」ってところから、「失礼千万!」ってところまで、夢にしてください!!!