そんな時だ。
「おーい、キツツキ」
どでかい声が、耳に届いた。
「なんですか?」
重い腰を上げ、川の中州へ行ってみる。
「ほれ、これこれ、これや」
「人差指、どうかしたんですか?」
「アホか、いやいや、キツツキは、ええ子や」
「ありがとうございます」
「そやから、ここを、掘ってくれ」
策作じいさんが指し示す先、やわらかそうな土の表面に見える、白い物。
触ると、硬い。
「石ですね」
手で掘ってみる。
でも、それは、掘っても、掘っても、全貌を現さない。
「かなり、でかいな」
むふふ、策作じいさんの小鼻がぴくついている。
「でも、あまりきれいじゃないですね」
白っぽい石の表面は、土で汚れて、うっすら茶色くなっている。
「水、かけてみ」
両手にすくった水をかける。
「やっぱり、きれいじゃないですね」
「アホか、キツツキは」
「はい、あたし、」
「いやいや、アホやないから、泣くな。・・・もっと、いっぱいや。ざざざーっと、水をかけてみい」
と言われても、ざざざーっとかける道具がない。
いや、ある! タマゴロールとペットボトルを入れてきたビニール袋!
「はい、かけます!」
大量の水をかぶった石を見て、あたしは、息をのむ。
劇的な変化だ!
まるで、仕事着のシンデレラが、魔法でドレスをまっとったようだ!
その石は、白く、輝いている。
乳白色の肌に、浮かび上がる翠が美しい。
「タオルで、水、拭いてみ」
首から外したタオルで水分を拭う。
太陽の光を浴びて、石の表面の結晶が、きらきら輝く。
「さわってみ」
触れると、指に吸い付くようだ。
「これがお宝級いうもんや」
策作じいさんの、小鼻がふくらむ。
片眉が、ぴくんと跳ね上がる。
「自慢やないけど、・・・参ったか?」
いえいえ、これは、もの凄い自慢です。
もっと、もっと、小鼻ふくらませても、もっと、もっと、眉をあげまくっても、いいと思います!
「はい! 参りました!」