ぜんぜん不思議じゃなかった3日間(9/15)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

そんな時だ。
「おーい、キツツキ」
どでかい声が、耳に届いた。
「なんですか?」
重い腰を上げ、川の中州へ行ってみる。
「ほれ、これこれ、これや」
「人差指、どうかしたんですか?」
「アホか、いやいや、キツツキは、ええ子や」
「ありがとうございます」
「そやから、ここを、掘ってくれ」
策作じいさんが指し示す先、やわらかそうな土の表面に見える、白い物。
触ると、硬い。
「石ですね」
手で掘ってみる。
でも、それは、掘っても、掘っても、全貌を現さない。

「かなり、でかいな」
むふふ、策作じいさんの小鼻がぴくついている。
「でも、あまりきれいじゃないですね」
白っぽい石の表面は、土で汚れて、うっすら茶色くなっている。
「水、かけてみ」
両手にすくった水をかける。
「やっぱり、きれいじゃないですね」
「アホか、キツツキは」
「はい、あたし、」
「いやいや、アホやないから、泣くな。・・・もっと、いっぱいや。ざざざーっと、水をかけてみい」
と言われても、ざざざーっとかける道具がない。
いや、ある! タマゴロールとペットボトルを入れてきたビニール袋!

「はい、かけます!」
大量の水をかぶった石を見て、あたしは、息をのむ。
劇的な変化だ!
まるで、仕事着のシンデレラが、魔法でドレスをまっとったようだ!
その石は、白く、輝いている。
乳白色の肌に、浮かび上がる翠が美しい。

「タオルで、水、拭いてみ」
首から外したタオルで水分を拭う。
太陽の光を浴びて、石の表面の結晶が、きらきら輝く。
「さわってみ」
触れると、指に吸い付くようだ。
「これがお宝級いうもんや」
策作じいさんの、小鼻がふくらむ。
片眉が、ぴくんと跳ね上がる。
「自慢やないけど、・・・参ったか?」
いえいえ、これは、もの凄い自慢です。
もっと、もっと、小鼻ふくらませても、もっと、もっと、眉をあげまくっても、いいと思います!
「はい! 参りました!」

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。