つなぐ(5/10)

文・藤 紫子  

お守りを探しているあいだに出発していた電車は、まもなく次の駅に着きました。
花束を持ったおじいさんは、とびらが開くと同時に降りました。

「時音駅へもどる電車はいつだ!」
はやる気持ちで電光けいじ板を見上げると、25分もあとのことでした。
「ああ、何てこと・・・」
ベンチにこしかけましたが、すぐに立ち上がりました。

電車が見えないか線路をのぞいてみたり、何時になったか時計をたしかめたり、まだあと何分もあるとため息をついたり、じっとしていられません。
「長い。まだか。まだ来ないか」
いつもなら、25分はどうってことはありません。
でも、今は、1時間にも2時間にも感じられます。

「もっと気をつけておれば・・・」
ついには、後悔の気持ちが押し寄せてきました。

藤 紫子 について

(ふじのゆかりこ) 札幌市生まれ。札幌市在住。季節風会員。小樽絵本・児童文学研究センター正会員。12年ほど町の図書館員をしていました。子ども向けのお話と好き勝手な詩(https://ameblo.jp/savetheearthgardian/entry-12601778794.html)を書いています。自然・ドライブ・博物館・棟方志功氏の作品・源氏物語・本(本なら問題集でも!)が好き。