つなぐ(9/10)

文・藤 紫子  

帰りの電車のなかで、おじいさんは手紙に書く内容を考えました。
(出だしはこうだな。『こんにちは。このたびはお守りを見つけてくださって、ありがとうございます。あなたのご親切が大変うれしく、こうしてお礼のたよりをしたためました。あのお守りは、わたしにとってはとても大切なもので――』)
家に帰ると、疲れきっていたものの、その日のうちに手紙をすっかり書き上げました。

次の日、おじいさんはふたたび時音駅を訪れました。
「どうぞお入りください。お伝えしたいことがございます」
駅長さんにさそわれるまま、おじいさんはおじゃましました。
「いやぁ、お客様。じつは、お客様のお守りを拾った方がわかったんですよ! 偶然が重なりまして、奇跡のようにわかったんです!」

駅長さんは興奮したように説明してくれました。
「情報をお知らせしてほしいというポスターを作って、あちこちに張りだしていましたら、拾っているところを見かけたという方が現れましてね。大学生くらいの二人連れの女性だということがわかったんです」

見かけたという情報はほかにも入り、やはり若い女性だったということと、いつも決まった時間に時音駅で見かけるという情報でした。
しかも、その時間帯がこれからはじまるというところだったので、駅員さんたちが手分けして見張っていたところ、すんなり見つかったのです。

藤 紫子 について

(ふじのゆかりこ) 札幌市生まれ。札幌市在住。季節風会員。小樽絵本・児童文学研究センター正会員。12年ほど町の図書館員をしていました。子ども向けのお話と好き勝手な詩(https://ameblo.jp/savetheearthgardian/entry-12601778794.html)を書いています。自然・ドライブ・博物館・棟方志功氏の作品・源氏物語・本(本なら問題集でも!)が好き。