つなぐ(9/10)

文・藤 紫子  

「さようでしたか。いや、正直、若い方々がそんな心づかいをするものとは思っておりませんでした。お恥ずかしい」

「いえいえ。それはわたくしも同じです。昨日は大変感心いたしました。うちの新米もお守りを拾われた方々と似たような年でして、彼にかたよった見方をしていたかもしれないと、わたくしも気づかされましたよ」

その新米の駅員さんが、お盆にお茶を持ってきてくれました。
おじいさんと駅長さんは、ありがたくいただきました。
ほろ苦さが口のなかに、じんわりと広がりました。

のども心もうるおったところで、おじいさんはポケットから手紙をそっと取りだしました。
「駅長さん。お二人にお渡しのほど、どうかよろしくお願いします」
「はい、かしこまりました。必ずお渡しいたします。ご安心ください」
駅長さんの快い返事に、おじいさんは深々と頭を下げました。

藤 紫子 について

(ふじのゆかりこ) 札幌市生まれ。札幌市在住。季節風会員。小樽絵本・児童文学研究センター正会員。12年ほど町の図書館員をしていました。子ども向けのお話と好き勝手な詩(https://ameblo.jp/savetheearthgardian/entry-12601778794.html)を書いています。自然・ドライブ・博物館・棟方志功氏の作品・源氏物語・本(本なら問題集でも!)が好き。