ぼくたちは夏の道で(2/12)

文・朝日千稀   絵・木ナコネコ

猿神さんは、海外に旅立った助手1号(アキラというらしい)の代わりとして、助手2号をスカウトしてくるように、チャッピーに頼んでみたそうだ。
スカウトしてくれば、ラッキー!
スカウトしてこなくても、元もとくらいの軽い気持ちだったが、チャッピーは、ちゃんとぼくを連れて来た。

「そういうことだから」
「はい?」
「それに、おまえ、さっきワシが、助手2号に任命した時、ありがとう、と言ったじゃないか!」
「そういえば、どさくさに紛れた感じで・・・」
「なら、いいじゃないか。馬には乗ってみろ、どさくさには紛れてみろ、だ!」
だろ? とうなづき、
「この季節は、大忙しだ」
猿神さんは勝手に事を進めていく。

「あの、でも・・・」
「この期に及んで、あの、でも・・・、と?」
「いや、あの、猿神さん、面接とかしなくていいんですか? 自己紹介とか?」
「って、幸太、おまえ、したいのか? 自己紹介」
「一応、雇われるわけですし」

「って、おまえ、雇われるのか?」
「雇われませんか?」
「雇用関係ではなくて、お手伝いだ。それに、チャッピーが見込んだ奴なら悪い奴じゃないだろう。チャッピーに見込まれたワシが言うのもおこがましいが」
だろ? と問われても、反論しかでてきそうにない。

だから、ぼくは、黙りこむ。
「ワシを投げ飛ばして、足首を痛めさせるほどだから、腕力はありそうだ」
「すみま・・・」
・・・せん。
「腕力と体力があれば、充分だ。それにさっき、もう、名前は聞いた」
「はい・・・」
「あっ・・・」
「はい?」
「で、どうする? 通いか住み込みか? ワシの希望としては、住み込みにしてもらったほうが、ありがたい」
猿神さんが、ニヤリと笑う。

朝日千稀 について

(あさひ かづき)福井県福井市在住。3猫(にゃん)と一緒なら、いつまでもグータラしていられる

木ナコネコ について

(きなこねこ)福井生まれ、大阪住まい。福井訛りの謎の関西弁が特徴。猫と珈琲と旅が好き。