「夏祭りの花火の夜、ワシにゾンビの役を押し付けてまで、奴のすることは、デートに決まっている。そして、デートの後に、行く場所も、決まっている」
猿神さんの言っていたことは、こういうことだったのか・・・。
いつの間にか、花火は終わっていて、見上げた空に、星が流れた。
いつか黒岩さんの恋が成就しますように!
消えた流れ星に祈ってみた。
効き目、あると、いいけど。
「黒岩、ラヴちゃんのナビに、ふくふく亭をセットしろ」
「先輩、ぼくの車はRAV4ですから! ちゃん付けするの止めてもらえますか。それに先輩、ナビは嫌いじゃないですか」
「ふんっ。細かいことは気にするな。それに、ワシは最近、ナビにつっこみを入れるのが、楽しくなってきたんだ」
「わかりました。そう言えば、最近、そんな気もしていました。セットしますよ」
ふくふく亭を目指して、山道を下りて行く。
こんどは、車も通れる、広い道だ。
「・・・周辺です。気をつけて走行してく・・・」
「ふんっ。おまえ、もっと、きっちり仕事をこなせ! なにが、目的地周辺だ! きっぱりと言ってみろ! ここが目的地です、と!」
「さ、猿神先輩、その辺にしてもらえますか」
「なに? まだ、言い足りんくらいだ!」
そんな、すったもんだは、あっちに置いて。ふくふく亭は、真っ暗だった。
あきらめて、ぼくたちは、帰路に着く。