しばらくすると、男の人がやってきた。
「あれ? あきらくんしごとにいったのか。かさ、かえしにきたんだけど・・・」
それから、ぼくを見て
「やあ、ちょうどいいるすばんがいるね。このかさもっててくれる?」
そう言って、ぼくの手にかさをひっかけた。
「あきらくんにつたえとくからさ、たのむね」
それで、ぼくはほんとうに、るすばんのゆきだるまになった。
お日さまが、空のだいぶ高いところにのぼって、少しだけあたたかくなった。
「ぼうしがゆがんできちゃったわね」
かいものがえりのおばさんが、ぼうしをまっすぐになおしてくれた。
しばらくして、うでが下にさがってきた。
「かさがおちそうだよ」
ゆうびんやさんが、ぼくのかさをもったうでを、ぐっと体にさしこんでくれた。
〈ありがとう。だいじょうぶです。ぼくはるすばんのゆきだるまですから〉
お昼をすぎると、ずいぶんあたたかくなってきた。
みちのゆきは、もうきえてしまった。
ぼくも少しづつとけてきて、目のまわりから、ポタポタ水がおちはじめた。
「なかないで」
ようちえんからかえる女の子がぼくの目を、ハンカチでふいてくれた。
〈だいじょうぶです。ぼくはるすばんのゆきだるまですから〉