第3話 もえちゃんのなみだ
ギュッ。
もえちゃんは泣きながら、小さいときからの宝もののふわふわのテディベアを抱きしめました。
このテディベアは、もえちゃんの一番の宝ものです。
1年生になった時に、大好きなおじいちゃんが買ってくれたんです。
泣き虫なもえちゃんはこのテディベアくんが一緒じゃないと、今でも夜ひとりで眠れないんです。だって・・・夜って暗いじゃないですか。オバケさんがうようよいるような気がして、夜中にトイレにも行けないんです。
それで3年生の今でも、もえちゃんはまだトイレの時にはこっそりと夜になるとママを起こしていました。
もちろん、これはゆうちゃんとりんちゃんにもひみつです。ゆうちゃんとりんちゃんは、ふたごです。初めてできたお友だちなんです。
もしこんなことがバレちゃったら、笑われちゃうって思うんです。3年生は、大きいんです。お姉ちゃんなんです。
でも今、もえちゃんはお姉ちゃんなんかじゃないって思うんです。
3年生は子どもで、それでちょっとだけ大人なんです。ちっちゃな子どもなんかじゃないんです。
パパもママも、だあれもあたしのこと分かってくれないんだあ。
なみだがたくさんたくさんあふれてきます。
ヒッヒッ。
泣きすぎて、だんだんと苦しくなってきました。ティッシュで鼻をぐしゅぐしゅした時でした。
「・・・かなしいの?」
不意に部屋のどこからか、やわらかい、かわいい子どもの声が聞こえてきました。それはまだ幼い男の子の声でした。
「だ・・・だぁれ?」
鼻をぐしゅんとすすって、もえちゃんはあわててテディベアから顔を上げました。
「だっ、だれかいるの?」
「泣いているんだね」
やさしい声が聞こえてきました。声といっしょに、目の前がゆがみました。