イヤイヤ期に寄り添ってもらえることの愛

◆ちょっとしたことの積み重ねが

私も保育士をしていて、ちょうどこの年頃の子どもたちと関わることも多いです。
ある時、お友だちに八つ当たりしてなんだかイライラしている男の子がいました。
その様子から「遊びが見つからないの?」と聞くと、その男の子は「うん!」と半分泣きべそをかきながら答えました。

私はその子を抱っこして「このおもちゃはどう?」と聞いてみました。すると「いや!」と答えました。
その後も順番にいろんな玩具を指さして「これは?」と聞いていってもどれも「いや!」の連発。

最終的に8個目くらいに、窓に貼られていた紙でできた朝顔を「これは?」と言って指さすと、ようやくその男の子は笑顔になり、それを触って遊び始めました。
しばらく遊ぶと、その子のご機嫌も直って自分から抱っこを下りたいという仕草を見せ、また自分で別の遊びを見つけにいきました。

自分の気持ちをどうしたら満たせるのか困っている時に、そっと大人が寄り添ってあげることで子どもは自分でまた気持ちを立て直し、楽しく過ごせるようになります。
そういったちょっとしたことの積み重ねが、実はその子の深い部分で自分を取り巻く身近な存在が自分に寄り添ってくれるという安心感や愛を感じ取り、「自分は世界に愛されている」と感じられる基盤にも繋がっていきます。

この絵本はイヤイヤ期のお子さんを持つ親御さんとっては特に共感してもらえる作品ですし、子どもたち自身にとっても自分の姿を客観的に見る体験にもなって面白いのかなと思います。
ぜひ親子で楽しんだり、保育の現場でも子どもたちにぜひ読み聞かせしてあげてください。

 

えもり なな について

江森 奈々(えもり なな)1985年神奈川県生まれ。千葉県在住。幼少期より母から良質な絵本を与えられて育つ。幼い頃から絵を描くことが得意で、小学生の頃は漫画を描く。中学生になると美術部に所属し油絵を始める。灰谷健次郎の「兎の目」に感銘を受け、10代は日本や世界の児童文学を読みふける。現在、保育士をしながら絵本や童話、紙芝居の創作、読み聞かせを行っている。画家・イラストレーター、モデルとしても活躍中。絵本は1500冊以上読破。2023年be京都にて初のプチ個展を開催。パレットクラブスクール19期絵本コース卒業。トムズボックス2019冬季ワークショップ修了。 『絵本作家になるには、絵が描けないと無理ですか』(CATパブリッシング)の挿絵を一部担当。 著書に『おへそはなにしてる?』(クリエイターズ絵本「YOMO」) ●YouTube:【なないろ本屋/7's BOOKSHELF】 ●Instagram:【nana_museum】