「くるみちゃん! 見て、うちの子! かわいいでしょう? いまから散歩に行くんだ」
習い事に行くとちゅう、公園のわきを歩いていたくるみは足を止めた。ブランコのそばで大きく手をふっていたのは、ゆいと孝太(こうた)だ。
くるみと同じクラスの友だちだった。
その足元に、みかけない犬が1ぴきいる。まだ子犬のようだった。
ふたりはくるみの元に走ってくる。もちろん犬もいっしょだ。
くるみはまゆをよせて、キッパリと言った。
「わたし、犬はキライだから、近づけないで!」
かけてきたゆいと孝太は、おどろいて立ち止まる。
いっしょに走ってきたたれ耳でどう長の子犬は、くるみを見てうれしそうにしっぽをふっていたが、ゆいはあわててリードを引っぱると、自分のところに子犬をひきよせた。
くるみはいやそうに、ふいっと顔をそむける。ゆいはずいぶんこまった顔をしていた。
「えっ、でも、くるみちゃん、犬のこと・・・」
「へえ、くるみは犬キライなんだ。犬ってさ、かわいいよ? オレの家も、いま犬を飼(か)う相談してるから、ゆいのとこの子犬、見にきたんだ。くるみも、ちょっとなでてみたらいいのに。いまから、ゆいのお母さんといっしょに犬の散歩に行くんだけど、くるみもどう?」