それから数日たった、秋晴れの朝のことだった。
今日は祝日だ。平日の休みはあまりないので、くるみはなんとなくそわそわした気持ちでいる。
「今日は、スケッチ日和!」
庭にはり出したウッドデッキに出るなり、くるみはパッと顔をかがやかせた。キンモクセイの木の下には、ローズマリーの大きなしげみが育っている。さわやかな空に、こい緑がよくはえて、絵にするのにとてもいい。
くるみが画用紙と絵の具のセットを持ってきて、パレットに熱心に色を作っていると、大きいまどを開けたままだったのでソラがひょっこりと顔を出した。外のにおいをすんすんとかぐと、しばふの庭に飛び出していく。
「ちょっと、うろうろするとじゃまだよ!」
くるみがもんくを言うと、おうえんされたとでも思ったのか「オフッ!」ときげんのいい鳴き声を返して、ソラはおどるような足どりで庭で遊びはじめた。しばらくして落ち着くと、ソラはまたすっと部屋の中に入って、なにかをくわえてもどってきた。
「ソラ、ちゃんと足をふかないとダメだよ。え、ちょっとなに?」
ぬれた鼻面をぐいぐいとくるみに押しつけ、ソラはポトリとなにかを落とした。
水色のゴムボールだ。好きな人のところに持っていくと聞いた、あのゴムボール。