エルとくるみとソラ(5/7)

文・七ツ樹七香  

くるみは真っ青になって、かくれているのもわすれて、ドアを大きく開き飛び出した。
「ねえ、どういうことっ! ソラはもうウチの犬になったんじゃないの?」
「くるみ! お前、立ち聞きしていたのか。おぎょうぎが悪いぞ」
お父さんはおどろいてくるみをしかったが、くるみにはそれどころではなかった。

「ごめん。でもっ、ねえっ、ソラは?」
「くるみ、あなたはソラのこと、好きじゃないんでしょう?」
こまったようにお母さんがいうので、くるみはあわてた。くるみはソラを好きじゃないことにしているけれど、ソラはくるみのことが好きだ。ソラがまた家族と別れる悲しい思いをするのではと思うと、いてもたってもいられなかった。ソラは、初めて家に来たあの日、あんなに心細そうな顔をしていたのに。

「そうだけどっ、お母さんはソラが好きでしょ? お父さんもそうだし、だったらいいじゃない!」
くるみが食い下がると、ふたりはこまりきった様子で顔を見合わせた。しばらくすると、お父さんはしんけんな顔でくるみに話しだした。
「ソラが、お前のことを好きだってアピールしてるのは、わかってるか?」

くるみは、うしろめたい気持ちで口をつぐむ。ソラに「ごめん」と思う気持ちは、くるみの中にもいつもあったからだ。
「・・・・・・」
「犬は、ムシされるのを悲しいと感じる生き物だよ。今のわが家はあまりソラにとって良くないかんきょうだろうと、お父さんは思っている」
「それは・・・」

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県出身。「ピイのとんだ空」で第30回日本動物児童文学賞優秀賞。 「ラスト・オテモヤン」で第41回熊本県民文芸賞小説部門一席を受賞。熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、第1回西の正倉院みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞大賞、第16回深大寺恋物語 調布市長賞など。 共著に『謎解きホームルーム2』『恐怖文庫』『感動文庫』(いずれも新星出版社)動物が好き。犬と小鳥と暮らしている。