「くるみ、エルはくるみのことが大好きだったのを知っている?」
くるみは言葉につまる。お父さんはジッとくるみを見ていた。それを不安そうに見守るお母さんとソラがいる。くるみはくちびるをかむ。
エルは、いつもくるみといっしょだった。
『知らない』なんて、言えるはずもないぐらいに。
「知ってるよっ、知ってるに決まってるじゃない。わたしも――、好き、だったもん!」
涙声(なみだごえ)になりかけたのを、ごまかすようにくるみは大きな声で言った。
「くるみ、お父さんはエルが死んでしまったこと、本当につらかったよ」
「そう、でしょう。ごめんなさい、わたしのせいだから」
あのとき出かけようなんて、言わなければよかったのだ。
泣いたりしないお父さんが、あの日泣いたのだ。
「ちがうよ、くるみのせいなんかじゃない」
お父さんははっきりと言った。くるみはハッとした。