「いつもだれかがうれしいと、エルは自分もよろこんでしっぽをふってた。エルは――、みんなのことが、大好きだったもん。わたしも、エルが、大好きだった」
ポロリと涙をこぼしたくるみが言うと、お父さんはくりかえしうなずいた。
「そうだね。死はつらい別れになるけれど。そのしゅんかんより、はるかに長くあたたかい時間を、エルとわけあってきた。お父さんはそれを大切にしたい。だって、もしどこかでエルに会えたら、きっとしっぽをふって飛んできてくれるんだから」
思い出すと涙が出ることだってあるけれど。と、お父さんはつけ加えて、そばでこまったような顔をしているソラをそっとなでた。
「エルを、悲しみとこうかいでぬりつぶさないでやってほしい」
くるみだっていつも思っていた。大好きなエルを大好きなままでいて、その次に家にやってきたさみしそうなソラを、笑顔でむかえられたらよかった。
エルとの別れを思い出すと、仲良くして大好きになるのは、つらいことのように思えるけれど。たしかに、あの悲しいしゅんかんよりも、ずっとずっとたくさん。エルは楽しくてあったかくて、うれしい時間をくるみにくれた。まちがいなく、そうだった。