てんてん坊は、オニをおしのけて、のぞき窓から、中の娘に声をかけました。
「小糸ちゃん、私はてんてん坊という坊主だよ。小糸ちゃんは、どうして、こんなところにいるんだね」
やさしい声に、娘は、はっと、顔を上げました。
「わからないの。おっかちゃんと、さよならしたの。そしたら、ここにいたの。ここは暗くて、何にも見えないの。それに、いつも、こわいオニの声がする。あたい、かえりたい。おっかちゃんに会いたいよお」
「おっかちゃんはここだどぉ!」
と、さけぶオニの大きな口を、てんてん坊は、あわてて、両手でふさぎましたが、手おくれでした。
娘は、また、わんわん、泣き出しました。
「だめではないか、オニどん」
たしなめるてんてん坊の胸ぐらを、オニは、むんずとつかみました。
「なじょしたらええ? どいぐにしたら、娘を助けられる? 坊主だべ!? 考えろ!」
「ううむ・・・」
「ありがてえ経をとなえるとか、何か、すべあるべ!?」
「経か・・・。それより、いっそ、娘さんにたずねてみてはどうだろう? 何か、いい方法が見つかるかもしれない」
「んだら、すぐに聞け!」
オニは、てんてん坊を、のぞき窓におしつけました。