3 正義のステルスおばあちゃん
空の散歩はいい気持ち。
「もう、えんりょはいらないわ。私のすがたは、だれにも見えないんだもの」
見慣れた町も、上空からだと、まるでちがって見えます。
「あっちの屋根は古風な三州がわら。さすがに品があるわね。こっちは太陽光パネル。エコを考えているのね。感心だわ。それに比べると、コンクリートは味気ないわねえ。あら、でも、屋上ガーデンがある! ちょっと、下りてみようかしら」
だめだめ、勝手におりちゃ!
ふと、ハツさんは、一けんの家のベランダに、カラスがとまり、しきりに、おじぎをしているのを見ました。
「ああやって、カラスがおじぎをしている時は、きっと、何かをねらっているんですよ」
ハツさんは、そっと、観察します。すると、案の定、カラスは、何かを取って、さっと、まい上がりました。
「あ、あれは、針金のハンガー! 巣づくりの材料にするつもりね! そうはいくものですか!」
ハツさんは、空中でカラスを待ちぶせて、ハンガーを、ガッチリ、つかみました。
カラスはびっくり! 何もない所で、くわえていたハンガーが、バキッと、固まってしまったのですから。
「ガワッ!?」
いきおいあまったカラスは、口ばしの先で、ハンガーの周りを半回転し、それから、バサッと、空中に投げ出されて、「カカカ、カア!」っと、にげて行きます。
「正義のステルスおばあちゃんにかなうと思う!?」
ハツさんは、くすくす、笑って、ハンガーを、ベランダに返しましたが、その後も、しきりに、くすくすしています。何か、いいことを思いつたのです。