でも、間もなく、ハツさんは、またもや、ため息になりました。
「ああ、たいくつ。もっと、大事件は起こらないものかしら」
「事件ですか? 事件といえば、このごろ、このあたりで、変な事件が起こっているみたいですよ」
新聞を広げていたコスモ博士が言いました。
「あちこちで、マシュマロだけをねらうどろぼうが出ているそうです」
「マシュマロどろぼう?」
「ええ。変でしょう。ほかには、何もとらずに、マシュマロだけが、人の家や、お店から消えるんだそうですよ」
ハツさんの目がかがやきました。
「それはひどいわね。よろしい。私が、きっと、つかまえてやるわ!」
その日から、ステルスおばあちゃんの張り込みが始まりました。
「きっと、お菓子屋さんに現れるわ。それも、とびきり、おいしいマシュマロのあるお店に!」
ハツさんは、町一番のお菓子屋の、店員のとなりにじんどりました。もちろん、すがたをかくして。
お店の名前は「マシュマロの夢」。ピカピカのショーケースをのぞけば、おいしそうなケーキやクッキーといっしょに、雨上がりのにじをねじ切って丸めたような、色とりどりのマシュマロが並んでいます。
「本当に、夢のようねえ」
ハツさんは、うっとりです。
「ううん、あまい、いいにおい! もう、どろぼうなんて、どうでもいいから、買って帰って、食べようかしら」
何度、そんな思いをがまんしたことか!
そうやって、何日か、過ぎたころ、とうとう、目の前で、マシュマロが、ひとりでに、ショーケースから出て、すうっと、空中に消えました。