ステルスおばあちゃん(4/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤耀

「あらら!」
1個。そして、また1個・・・。
ハツさんは、じっと、目をこらしました。
最初はぼんやり、そして、だんだん、はっきりと、おかしなものが見えてきました。

「人かしら? それにしては、ほっそりしているわ。まるで、ヤナギの木みたい。それに、頭でゆらゆらしているのは何? アンテナ?」
ひょっとして、宇宙人!?

「あなた、どろぼうはいけないことよ!」
ハツさんは、テンテキガンを、どろぼうに向かって打ちました。
カチッ。
何も起こりません。
その代わり、どろぼうが、ハツさんに目を向けました。

「ぼくが見えるんですか?」
「私が見えるのね?」
ふたり同時に、きょとんと、目を合わせ、そのまま、しばらく、固まっていました。それから、変などろぼうが、思い出したように、
「ワレワレハ、ウチュウ人ダ!」
と、カタコト、言いました。

ハツさんは、うぷっと、吹き出しました。
「何よ、いまさら。そんな風に、カタカナでしゃべったって、手おくれですよ!」
と、きりっと、言い返します。
「そうですか? 確か、どこかの家のテレビでは、地球外生命体が、こう、あいさつしていましたよ」
「人んちのテレビをのぞき見していたの!? だめじゃない!」

店番をしていた店員は、きょろきょろ。店内にだれも見えないのに、声だけがしています。
「どなたか、いらっしゃいますか?」
ハツさんは、あわてて、どろぼうのうでを引っ張って、外に連れ出しました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに