町を一回りして、ハツさんは、ひょうしぬけしました。
「なあんだ。ぜんぜん、平和じゃないの。カラスなんか、どこにもいないし、小鳥たちの巣は空っぽ。子育ての時期がとっくに過ぎて、ヒナたちは、巣立ちしたあと。ああ、あわてて損したわ」
ハツさんはスタングラをオフにすると、
「帰って、ミエンダーさんと、映画を見ようっと。そうだ、新しいのを借りて帰ろう」
と、ビデオショップに入りました。
「何にしようかな? 新作は、まだ、お高いかな?」
店内を探していると、ふと、カウンターの上のテレビの大画面が目に入りました。
美人のアナウンサーが、市民ホールの前で、何か、言っています。ハツさんは、はっと、耳をそばだてました。
『今日、ここ、市民ホールでは、各国の科学者や、政府関係者が集まり、国際平和会議が開さいされます。はるばる、地球から1400光年はなれた星からやってきたお客様の話を聞くためです。講演者のミエンダー・デル・キエールさんは…』
「何ですって!」
ハツさんは真っ赤になりました。
「私をだまして、ミエンダーさんを連れ出したのね、コスモ! そして、多田君! ぜったいに許さないわよ!!」
ハツさんはスタングラのスイッチを入れました。パサッという羽音を残して、ハツさんのすがたは消えました。