エピローグ
ハツさんは、それから3年ほどして、また、消えました。でも、こんどは、コスモ博士は探しませんでした。置き手紙がしてあったからです。
「コスモさん、ミエンダーさんが、風船をふくらませなくてもキエール星に行ける方法を考えてくれたので、ちょっと、行ってきます。少し、長くなるかもしれないけど、心配しないでくださいね。じゃ、またね。ハツ」
それから、コスモ博士は、せっせと、スタングラ・デバイスの改良に取り組むようになりました。
「どうしたら、スタングラが、ワープドアをくぐりぬけるように働くのだろう? どうして、母さんだけに、それができたのだろう?」
「先生、まだ、そんなことをしてるんすか!?」
多田君がかけこんできました。
「明日は、ノーベル賞の授賞式に出発しなくちゃならないってのに! スピーチの原稿はできてるんすか!?」
「いや、私は忙しいから、君がやっておいてくれる? そうだ、できたら、授賞式も、私の代理で、君が出てくれるといいんだが?」
「いやあ、おれがっすか? 困るなあ・・・」
でも、まんざらでもないようで、「ええと・・・」と、多田君は、スピーチを考え始めました。
「格調高く、始めないとなあ。『えー、みなさま、本日は、お日がらもよろしく・・・』」
「いいね、そんな感じでたのむよ」
と、コスモ博士。
「すまないね、多田君。今の私には、一刻も、惜しいんだ。どうしても、キエール星に行ってみたくてね」
「そすか・・・」
多田君は、ハツさんが残して行ったスタングラを、なつかしそうに、見やり、
「おれ、分かりますよ、先生の気持ち」
と、いがぐり頭をなでしました。
「そうだ、燕尾服(えんびふく)がいりますよね! おれ、借りに行ってきます!」
多田君が、ばたばたと、出て行くと、コスモ博士は、また、スタングラにかがみこみました。
コスモ氏がどんなに天才でも、今度ばかりは、とびきり、むずかしい問題です。
でも、コスモさんは、決して、あきらめません。
「どうしても、どうしても、もう一度、母さんに会いたいんだ」
がんばるからね、母さん!