<その4>
ノンノン、ノンノン。
バスはのどかな音を立てて走り出しました。
ひざの上のボールをギュッとかかえながら、口を真一文字につむり、チャン小熊ねずみはひっしになみだをこらえていました。
チャン小熊ねずみの心は不安でいっぱいです。
けれど不安な気持ちはだれにも分かってもらえないのです。
本当はこんな時こそボールをつきたいのですが、ボールをついたらバスからおりなければなりません。そうしたらおばあちゃんのお見まいに行けないのです。
バスはのはらをこえ、山をのぼり、川ぞいの道を進みました。
ボンボンボンボンボン、ボンボンボンボンボン。
ボンボン時計が十回なりました。
「十時だ、十時だ。お十時になりましたよ」
うれしそうなかおでイノシシのうんてんしゅさんが言いました。
「おお、十時か」
ヤマネのおじさんがあくびをして言いました。
「さあさあ、お十時よ」
アナグマのお母さんの明るい声も聞こえます。
(お十時ですって?)
チャン小熊ねずみはボールをかかえながら首をかたむけました。(次のページに続く)