チャン小熊ねずみは、おばあちゃんにむかって大きく手をふりました。
「おばあさーん!チャン小熊ねずみですよー。お見まいに来ましたよー」
「あれ、あれあれあれ。チャン小熊ねずみ、来てくれたのね」
おばあちゃんは目をしばたたかせました。
「まあ、すごいこと、すごいこと」
ひたいにほしイモをのせたイノシシと、さかさにしたカサに乗ったアナグマのおや子、大こんをビート板にしたヤマネ、そしてボールをうきわにしてバタ足をする小熊のようなかおをした子ねずみの一行がスズランびょういんに向かっておよぎます。
「チャン! チャン! チャン! チャン! チャン小熊! チャン小熊! チャンこぐチャンこぐチャン小熊ねずみー!」
びょういんの前の川ぎしまでおよぐと、みんないっせいに川から上がりぜんしんをブルブルッとふるって水気を切りました。
さわやかな風がサァーッとふきました。
チャン小熊ねずみはしっかりとした口ちょうで、
「どうもありがとうございました」
と言って、走り出しました。
おばあちゃんは目をほそめてチャン小熊ねずみに手をふり、そしてみんなにふかぶかとおじぎをしました。
チャン小熊ねずみにイノシシのうんてんしゅさんが大きく手をふりました。
アナグマのお母さんは、キイキイ泣く子どもたちをカサから手早くおろしながら、目になみだをうかべて何どもうなずきました。
ヤマネのおじさんは大こんを両手で高くかかげました。
チャン小熊ねずみはずぶぬれのボールをかかえておばあちゃんのいるまどの下へとまっしぐらに走りました。
まっ黒だったボールは、川のながれでどろがおちてすっかり白くなっていました。(おわり)