チャン! チャン! チャン! チャン! チャン小熊ねずみー!(7/7)

文と絵・くまもり こぐま

チャン小熊ねずみは、おばあちゃんにむかって大きく手をふりました。
「おばあさーん!チャン小熊ねずみですよー。お見まいに来ましたよー」
「あれ、あれあれあれ。チャン小熊ねずみ、来てくれたのね」
おばあちゃんは目をしばたたかせました。
「まあ、すごいこと、すごいこと」

ひたいにほしイモをのせたイノシシと、さかさにしたカサに乗ったアナグマのおや子、大こんをビート板にしたヤマネ、そしてボールをうきわにしてバタ足をする小熊のようなかおをした子ねずみの一行がスズランびょういんに向かっておよぎます。
「チャン! チャン! チャン! チャン! チャン小熊! チャン小熊! チャンこぐチャンこぐチャン小熊ねずみー!」

びょういんの前の川ぎしまでおよぐと、みんないっせいに川から上がりぜんしんをブルブルッとふるって水気を切りました。
さわやかな風がサァーッとふきました。

チャン小熊ねずみはしっかりとした口ちょうで、
「どうもありがとうございました」
と言って、走り出しました。
おばあちゃんは目をほそめてチャン小熊ねずみに手をふり、そしてみんなにふかぶかとおじぎをしました。

チャン小熊ねずみにイノシシのうんてんしゅさんが大きく手をふりました。
アナグマのお母さんは、キイキイ泣く子どもたちをカサから手早くおろしながら、目になみだをうかべて何どもうなずきました。
ヤマネのおじさんは大こんを両手で高くかかげました。

チャン小熊ねずみはずぶぬれのボールをかかえておばあちゃんのいるまどの下へとまっしぐらに走りました。
まっ黒だったボールは、川のながれでどろがおちてすっかり白くなっていました。(おわり)

くまもり こぐま について

東京生まれ。旅行誌のライターを経てシナリオを書き、その後子供の頃からの夢であった児童文学作家を志しました。童話コンクールで賞をいただいたことをきっかけに、子供だけでなく、大人の心にも寄り添うような作品を書けるようになれたらと思っています。ほのぼのとしたかわいい作品だけでなく、心に迫るような現実を取り扱う作品も書いてます。どうぞよろしくお願いします。