「仲間だったあなたが、何をするの」
「うるさい! おまえらがばい菌を運び、人間に病気をうつすからだ」
「何をいってるの!」
「ネズミは、人間の敵だ!」
「人間が、私たちの住むところを追いやっているんじゃない」
サラは刺すような目でオレをみた。
「がたがたいうな!」
オレはとまどいながらも、身を低くした。
「みんな、お逃げ!」
サラはオレの前にたちはだかった。
オレがとびかかろうとすると、サラは身をひるがえして、かべのパイプを伝い、天井に向けてのぼりだした。
「まて!」
オレもパイプにとびついた。
ド、ドドーン
パイプはオレの体重にたえられず、くずれ落ちた。
「ナイト、しっかりして! だいじょうぶ?」
目をあけるとサラがそばにいた。オレは、もとの大きさにもどっていた。
「ロルフおじいさまは、昨年病気でなくなったわ。あなたのことをずっと心配していたのよ」
「じいちゃんが・・・」
「あなたが私をあやしてくれたのをおぼえているわ。ナイト、やさしいあなたがどうして・・・」
サラはオレの前足をさすってくれた。じわっと心にひびくほどあたたかかった。
そのとき、オレの心の中の忘れかけていたものに火がともった。
そうだ、オレはネズミたちと大の仲よしだったんだ!
「オレは神田博士に命をすくわれた。それ以来、ネズミをきたないものと覚えこまされてきたんだ」
オレはいたむ体を起こした。
「もう、こんな仕事はやめる。博士にもとの体にもどしてくれるようたのんでみる。サラ、必ずもどってくるから、待っててくれ!」
「待って、ナイト!」
サラが止めるのも聞かず、 オレは神田博士の研究所に向かってかけ出した。