仙台駅のペデストリアン・デッキは、毎日、大勢の人々でにぎわいます。
いえ、人間だけではありません。
実は、たくさんの鳥たちが、生き生きと、活動している場所でもあるのです。
朝は、カラスたちが、カアー、カアーと、呼び合います。
「あっちにビニールふくろが落ちているぞー。中味はフライドチキンだぞー」
「そっちにアイスクリームの食べ残しがあるぞー。うまそうな汁だぞー」
昼はハトたちのかっこうのえさ場です。
食べ歩きのおぎょうぎの悪い人間たちが、どんどこ、スナックをこぼして行きます。
わざわざ、パンくずなんかをちぎって、投げてくれる人さえいるのです。
夜には、デッキの足下から続く長いケヤキ並木に、たくさんのスズメが集まります。
大都会のど真ん中、そこは、イタチやヘビにおそわれる心配のないねどこです。
にぎやかに「おやすみの歌」を合唱してから、朝まで、ぐっすり、眠ります。
鳥たちがね静まったころ、お散歩する動物たちもいます。
ご主人と夜の散歩に出る犬もいれば、こっそり、家をぬけ出したネコもいます。
ネコのチェシャもそんないっぴきです。
ご主人が、パソコンで、パコパコ、仕事をしている間に、ベランダの窓からぬけ出します。
人がまばらになった駅ビル。シャッターの閉まったブティックや飲食店。夜おそくまで開いているレストランもあります。
その間を、ゆうゆうと歩いて、それから、ペデストリアン・デッキに出ます。
デッキのところどころにある花だんの中や、ベンチの下でくつろぐのです。
仙台の夏は、すとんと、終わります。9月を過ぎると、風は、急に、さわさわと、音を立て始め、空は、日増しに、高くなって行くのです。
そんなある夜、チェシャは思いがけないものに出くわしました。
お気に入りの花だんをのぞくと、植えこみの中に、1羽のハトが縮こまっていたのです。
チェシャは、ぴょんと、その前におどり出ました。