翌日、ハトは、仲間の目をぬすんでおこぼれをついばみながら、一日中、ネコの言ったことを考えていました。
日が落ちると、いつもの植えこみにかくれましたが、その夜、ネコは現れませんでした。
次の夜も、その次の夜も。ハトは、いくぶん、がっかりしました。
「かつがれたんだな。そりゃそうだ。ネコがオイボレバトのために骨を折ってくれるなんて、あるわけがないもんな。ネコの言うことなんかをうのみにした私がばかだったんだ」
こうして、何日かが過ぎて行きました。
季節はずいぶんと秋めき、夜など、すずしさを通りこして、寒いくらいです。
以前のように、商店ののき下で、仲間と身を寄せ合って夜を過ごしていたら、それほどのことはなかったでしょう。
でも、今は、たったひとり、心細い夜を過ごさなければなりません。
「もうじき、冷たい雨がくる。それから、雪だ。今年の冬を、私は乗り切れるだろうか?」
ハトは、人間にカナバシでつまみあげられ、ゴミといっしょにふくろに入れられる自分を想像して、暗い気持ちになりました。
それでも、何日かすると、傷めたつばさも、ずいぶん、よくなっていました。
それで、年老いたハトは、仲間から少しはなれた手すりに乗って、おこぼれをねらっていました。
人間もハトと同じで、若者たちは元気です。
ぺちゃくちゃ、しゃべったり、笑ったりしながらやってきます。
ふざけあっているうちに、手に持っていたスナックのふくろを落としたりします。
若者たちは大笑い。通路に散らばったスナックを拾いもせずに、行ってしまいます。
ハトたちにとっては大ごちそう。わっと、集まって、たちまち、食べつくします。
年老いたハトも仲間に加わろうとしましたが、なかなか、うまくいきません。
若いハトたちが、意地悪く、年老いたハトを追いはらい、ひとつも食べさせようとしないからです。
そんな時でした。