ビバ・ネバル!(1/6)

文と絵・高橋貴子

「世界一」のほこりはいったいどこ? まるで豆がくさったようなやつらじゃないか。
あまりになさけなくなってふんっと力を入れたもんだから、からだのあちこちにでこぼこができた。ほのちゃんの手と足みたい。

でもそんなことはどうでもよかった。ぼくはなかまたちをこづいてまわった。
「これじゃあ納豆に生まれたいみがない。ただの豆だよ」
「やめろよ、おまえはしつこいなあ」
みんなはいやそうな顔をした。

その時、お母さんのせかす声がした。
「早く食べないと、学校におくれるわよ」
ほのちゃんは気がすすまないようすでご飯とちょっぴりの納豆を口に入れると、ぷうとふくれた。

「納豆やだ、ベタベタするから好きじゃないもん。今日はなんでパンじゃないのよう」
「買いわすれちゃったのよ。それに納豆はからだにいいのよ」
お母さんの言葉はもうぼくにとどかなかった。
「このまま食べられるのなんか、ごめんだ。ぼくは、ぼくのねばりをまっとうしたいんだ!」
ぼくはお茶わんのはしからするっとおち、すたこらさっさとにげ出した。

高橋貴子 について

(たかはし たかこ)米国・オレゴン大学国際関係学部卒業。外資系企業に勤めながら、子どもの本について考えています。子どもが作りたての小説を真剣な目で読んでいたのが最近の一番嬉しい出来事です。第3回講談社フェーマススクールズ絵本コンテスト講談社児童局賞受賞。