ビバ・ネバル!(2/6)

文と絵・高橋貴子

ああ、ほのちゃんがいっしょうけんめいかきまぜて食べてくれれば、こんなになやまなくてよかったのになあ。
ほのちゃんのことをうらめしくおもいながらもっと歩いていくと、どこからか声がした。
「ちぇ、いやになっちゃうよ、まったく」

上を見ると、大きな虫が木にしがみついてぶつぶついっている。黒いからだに長い足。たしかこれはクモだ。

ぼくはまためいわくがられるかもしれないとおもったけれど、がまんできずに声をかけた。
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたも、タカのやつが小鳥を追いかけておれのすにぶつかったのさ。おかげで、ひとばんかけて作ったばかりのすがめちゃくちゃだ」

たしかに木から糸のようなものがたれさがって、ふわんふわんと風にふかれている。
「それはお気のどく」
そういってから、ぼくは糸に手をのばしてさわってみた。
「おや、ずいぶんねばりけがあるね、ぼくの糸みたいだ」
「え、おまえさん糸だすの?」
「まあね」
ぼくがこたえたとたん、クモの目がやわらかくなった。

高橋貴子 について

(たかはし たかこ)米国・オレゴン大学国際関係学部卒業。外資系企業に勤めながら、子どもの本について考えています。子どもが作りたての小説を真剣な目で読んでいたのが最近の一番嬉しい出来事です。第3回講談社フェーマススクールズ絵本コンテスト講談社児童局賞受賞。