ビバ・ネバル!(4/6)

文と絵・高橋貴子

ぼくはすべてをあきらめそうになっていた。
けっきょくがんばってもいいことなんてなかった。
始めからほかのなかまといっしょに、もんくをいわずねばらずおとなしくほのちゃんに食べてもらえばよかったのかもしれない。

「助けて」「助けて」

くらい気もちにしずんでいるぼくに、どこからか声がした。
自分の心の声?
いやちがう、だれかがじっさいにさけんでいるんだ。
耳をすますと、森のあちこちから声がする。

大きな木の上に虫たちがいるのを見つけた。
みんなしくしく泣いている。ぼくは木の根元につかまって船をおり、みきをよじのぼった。

「どうしたの?」
昼間会ったミノムシが、おそろしそうに下を見ながらいった。
「かぞくやなかまがおぼれているのよ。前の大雨の時もたくさんの虫たちが命をおとしたわ。またあの時みたいに」
目をこらすと、水にながされている虫たちがいた。
イモムシやアリもいる。どうすることもできずに水の中でもがいていた。

みんなの泣いている顔や苦しそうな顔を見ているうちに、なくなりかけていた「ねばり」の心がぼくの中にまたむくむくと生まれてくるのをかんじた。

高橋貴子 について

(たかはし たかこ)米国・オレゴン大学国際関係学部卒業。外資系企業に勤めながら、子どもの本について考えています。子どもが作りたての小説を真剣な目で読んでいたのが最近の一番嬉しい出来事です。第3回講談社フェーマススクールズ絵本コンテスト講談社児童局賞受賞。