こうなったら、もう秋斗(あきと)と父の勝利だった。
しかし、ことは一刻(いっこく)を争った。
父の力を借りて、秋斗はヒナのレスキュー体制を整えることにした。まずは500mlのペットボトルにお湯を入れてタオルでくるんだ。これで湯たんぽがわりになるらしい。夏ではあるけれど、こんな毛も生えていないようなスズメが生きのびるには、温度を上げてやらなければ命取りになるらしかった。
次に、ホームセンターが秋斗の味方になった。野鳥を育てるのに使うすり餌という飼料は、そこに売っているらしい。
「お父さん、早く! 急いで!」
「お前そう言ったってなあ、警察(けいさつ)につかまったら急ぐもなにもないんだぞ」
運転手をせかしながら、秋斗は気が気じゃなかった。小鳥のヒナはほんの数時間の放置で死んでしまうことだってあるという。あのちいさな生き物は、いったいどれくらいひとりでいたのだろう。