「全部オレがやる」
「・・・・・・」
「お母さん、あいつ、家に置いてもいい?」
「ダメって言いたいし、ちゃんと役所に聞いてからだけど、ふたつ約束するなら家に置いてもいいよ」
「本当?」
「ひとつ、絶対に飼いません。巣立つまでの一次的なこと」
「それはわかってる。絶対に野性に帰すよ。もうひとつは?」
「ふたつ、かわいがってはいけません。なつかせようと思わないこと」
「え?」
手に乗せてふわふわの小鳥をなでてかわいがることを想像していた秋斗は、ドキッとした。
「お母さんからは以上。じゃあ、エサの準備してあげなさい」
その日から、秋斗のさらなる奮闘(ふんとう)が始まった。
小鳥の朝は早い。だから、毎朝少なくとも六時には起きてエサを作りなさいとお母さんからきつく言いつけられていた。野鳥がエサをとるのも、早朝が一番活発だからだそうだ。
夜おそくまでお父さんのタブレットでスズメのヒナの育て方を読んでいたせいでねむたい。しかし、眠気(ねむけ)に負けてはあのちいさいスズメの「ピイ」の命に関わる。
秋斗はスズメをピイと名付けた。
昨日の夜、ケーキ箱に布をかぶせて休ませるときにこまったように上がったひと声。
ピイ、と確かに聞こえたたよりない鳴き声は、このちいさな生き物にぴったりの名前のように思われたからだ。
(本作品は「第30回日本動物児童文学賞」優秀賞受賞作を一部平易に改稿したものです)