ピイの飛んだ空(5/8)

文・七ツ樹七香  

そして、ピイが家に来て3日目の昼。
秋斗(あきと)が友だちとプールに行ったあとのことだった。
急いで家に帰ってピイの様子を観察していた秋斗はお母さんによばれた。

「秋斗、よく聞きなさい」
「なに」
「あ! ねえ。今日の分の宿題やった?」
「・・・まだ」
「じゃあ、言うのやめた。書き取りと計算、今日の分終わったらね」

ピンときた。ピイのことにちがいなかった。最初の山場だと思われたこの数日を乗り切ったのをみて、お母さんが「これなら」とつぶやいたのをけさ聞いていた。

「ピイのことでしょう? ねえ! いいニュース?」
「さあ、悪いニュースかもね。でも、宿題やらなきゃ教えません」
秋斗は大急ぎでその日の夏休みの課題をやりとげた。

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県出身。「ピイのとんだ空」で第30回日本動物児童文学賞優秀賞。 「ラスト・オテモヤン」で第41回熊本県民文芸賞小説部門一席を受賞。熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、第1回西の正倉院みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞大賞、第16回深大寺恋物語 調布市長賞など。 共著に『謎解きホームルーム2』『恐怖文庫』『感動文庫』(いずれも新星出版社)動物が好き。犬と小鳥と暮らしている。