ピイの飛んだ空(5/8)

文・七ツ樹七香  

使いすぎた頭をガンガンさせながらお母さんのところに『夏休みの友』を持っていくと、もったいぶった様子でお母さんは口を開いた。
「役所の人に電話しました。野鳥の許可なき飼育は『違法(いほう)』です」
「違法・・・」
「法律に違反しているということ」
「うん・・・」
「しかし、巣がなくなっていて、親がむかえに来る見こみがない。現在エサも食べている。病気の兆候がなく健康。これらの事情から、今回だけ特別です。巣立ちまで一時的にですが――」
「やったあ!」

「最後まで聞く! 可能な範囲で巣立ちまで手助けしてください。こちらはこの件に関与(かんよ)しません。だって」
「本当はダメっていうこと?」
「そうよ、下手したら『誘拐(ゆうかい)だ』って強くしかられたんだから」
「誘拐? オレ、助けようと」
口をへの字に曲げて、秋斗は抗議(こうぎ)した。

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県出身。「ピイのとんだ空」で第30回日本動物児童文学賞優秀賞。 「ラスト・オテモヤン」で第41回熊本県民文芸賞小説部門一席を受賞。熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、第1回西の正倉院みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞大賞、第16回深大寺恋物語 調布市長賞など。 共著に『謎解きホームルーム2』『恐怖文庫』『感動文庫』(いずれも新星出版社)動物が好き。犬と小鳥と暮らしている。