ピイの飛んだ空(5/8)

文・七ツ樹七香  

「そういうのが野鳥には迷惑(めいわく)だったりするの。似たようことがあっても、次はしてほしくないな。前にも言ったけど、本当は死んでしまうことだって、自然なの」
でもかわいそうだ、と言いかけて秋斗は口をつぐんだ。

家で一時的にでも飼えると聞いてうれしかったのに「迷惑」や「誘拐」だなんて、ひどいケチがついたようなつまらない気持ちでモヤモヤした。
「ピイはかわいいけど、かわいがっちゃダメだよ。人間を好きになることは、小鳥を幸せにはしないの。なんでなのか、よく考えてみて」
お母さんのいうことが、秋斗はまだよくわからなかった。

(本作品は「第30回日本動物児童文学賞」優秀賞受賞作を一部平易に改稿したものです)

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県出身。「ピイのとんだ空」で第30回日本動物児童文学賞優秀賞。 「ラスト・オテモヤン」で第41回熊本県民文芸賞小説部門一席を受賞。熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、第1回西の正倉院みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞大賞、第16回深大寺恋物語 調布市長賞など。 共著に『謎解きホームルーム2』『恐怖文庫』『感動文庫』(いずれも新星出版社)動物が好き。犬と小鳥と暮らしている。