ピイの飛んだ空(8/8)

文・七ツ樹七香   絵・久遠あかり

初めての巣立ちは、残念ながら失敗だったが、ピイのエサ取りはそれからますます上達した。
げんかんにプランターを持ちこんでそれについた虫を食べさせたり、植木鉢にスズメが食べるらしい雑草をつっこんで、ピイが食べるように訓練してみたりもした。
ピイはもうちいさな保育ケージにもどることもなくなった。外からにげ帰ってほんの数日なのに、ずっとたくましく、ずっと大人にピイは育っていた。

「よし、じゃあ・・・、行きな」
秋斗の家に来てから、16日目のことだった。
初めての巣立ちと同じように、げんかん先からピイは飛び立った。
ふり返ることもあまえて鳴くこともなく、その旅立ちはあっさりとしたものだった。
「バイバイ、ピイ」
生えそろった羽を懸命(けんめい)に動かして、うらのクリ林のずっと奥を目指してピイは羽ばたいていった。

七ツ樹七香 について

(ななつきななか)熊本県出身。「ピイのとんだ空」で第30回日本動物児童文学賞優秀賞。 「ラスト・オテモヤン」で第41回熊本県民文芸賞小説部門一席を受賞。熊本日日新聞に全10回連載され好評を博す。本作は朗読CD化、熊本県内数カ所の図書館で視聴可能。 ほか、第1回西の正倉院みさと文学賞 佳作、集英社WEBマガジンコバルト がんばるorがんばらない女性小説賞大賞、第16回深大寺恋物語 調布市長賞など。 共著に『謎解きホームルーム2』『恐怖文庫』『感動文庫』(いずれも新星出版社)動物が好き。犬と小鳥と暮らしている。

久遠あかり について

(くどうあかり) 漫画家。主に児童向け、動物のお話を執筆。ハリネズミや犬を飼い自然と動物好きに。現在は保護猫と暮らしている。また、別名義(光晴ねね)で少女漫画やロマンスジャンルなどで活動中。 pixiv fanbox 光晴ねね https://nene-mitsuharu.fanbox.cc/