初めての巣立ちは、残念ながら失敗だったが、ピイのエサ取りはそれからますます上達した。
げんかんにプランターを持ちこんでそれについた虫を食べさせたり、植木鉢にスズメが食べるらしい雑草をつっこんで、ピイが食べるように訓練してみたりもした。
ピイはもうちいさな保育ケージにもどることもなくなった。外からにげ帰ってほんの数日なのに、ずっとたくましく、ずっと大人にピイは育っていた。
「よし、じゃあ・・・、行きな」
秋斗の家に来てから、16日目のことだった。
初めての巣立ちと同じように、げんかん先からピイは飛び立った。
ふり返ることもあまえて鳴くこともなく、その旅立ちはあっさりとしたものだった。
「バイバイ、ピイ」
生えそろった羽を懸命(けんめい)に動かして、うらのクリ林のずっと奥を目指してピイは羽ばたいていった。