ペンギンのアディ(5/10)

文・伊藤由美  

「さてと、2つ目の質問。君の弟トトがどうなったか? それに答える前に、はっきり、言っておくよ。ぼくたち、トウゾクカモメだって、食べなくちゃならないんだ。それは分かるよね? あのころは、特に、巣の中で、2羽のヒナたちが、ぼくがエサを持って帰るのを、首を長くして待っていたんだ。だから・・・」
「だから、やっぱり、トトをエサにしちゃったの!?」
アディの頭の毛が、ぐぐっと、逆立ちました。

モルテンは、あわてて、首をふりました。
「ちがう、ちがう! そうしようとした矢先に、神様が降りてきたんだ」
「神様ですって!?」
アディの目はまん丸になりました。

「神様って、すごくえらい、あの神様? そんなに簡単に、降りてくるもんなの?」
「けっこう、気軽にやってくるよ。すごく、気まぐれだしね。何でもできるから、やりたいほうだい。神様が言うには、こうだ。『モルテンや、その子はゆるしてやってくれないか。たいそう、ゆうかんな子だから、すっかり、気に入ってしまったよ。私の庭に連れて帰ろうと思うのだ』神様が、そう、言うんじゃ、いくら、ぼくのヒナが、ピーピー、ねだっていても、あきらめるしかないだろう? というわけだから、トトは、今ごろ、神様の庭にいるはずだよ」

「それ、どこにあるの?」
「空の上。うんと高い所だよ。太陽の宮殿から近いって話もあるけど、いずれ、ぼくたち、空飛ぶ鳥が、どんなに頑張ったところで、決して届かない所さ。君の弟は、よほど、気に入られたんだな」

アディはふくれっ面になりました。
「神様がどんなにえらいか、知らないけど、勝手に、弟を連れていくなんて、ひどいよ。あたし、どうしても、トトを連れもどしたい! ねえ、モルテン、何か、いい方法はないの?」
「つれもどすだって! それって、神様にさからうってことだぜ。君は、ほんとに、無茶な子だなあ。ううむ・・・」
モルテンは顔をしかめましたが、
「だけど、あの神様に、ひとあわ、ふかせるってのも、ちょっと、面白いよな」
と、ニヤリとしました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに