6 スクアノタカラ
仲間が、どう、思っていようと、アディは構いません。じっと、モルテンを待っていました。
でも、なかなか、モルテンはもどってきません。
「だまされたんだよ、アディ。あんなやつのことはわすれた方がいいよ」
「そうだよ。それより、せっせと食べなくちゃ。夏は、いつまでも、続かないんだからね」
仲間たちは、そう、アディをたしなめました。
そうなのです。太陽は、地平を、一回りするたび、少しずつ、低くなっていきます。
それにつれて、光は、少しずつ、弱くなり、その分、風は、どんどん、冷たくなりました。
とうとう、ある日、ペンギンたちは、海岸からのぞむ遠い山々に、太陽が、ふっと、かくれるのを見ました。
雲は金色にかがやき、しばらくの間、山々は、美しいバラ色にそまりました。
それは若いペンギンたちが見る初めての夕暮れでした。
ペンギンたちは、そわそわ、なきだし、いつしか、歌になりました。
グェー グェー
夜が来る 夜が来る
お日様が おひっこしだ
北へ 北へ ひっこしていく
おいかけよう おいかけよう
あたたかい北の海へ!
この日から、ペンギンたちは、一羽、また一羽と、すがたを消しました。北へ旅立っていったのです。