夢の中で、だれかがよんだようです。
「アディ!」
「モルテン?」
目を開けると、アディは雪だまりの中に、ずっぽり、うずまっていました。
ブルン、ブルン!
立ち上がって、雪をふるい落としたアディは、空を見上げて、息を飲みました。
「わあ!」
星というものについて、アディが、モルテンの話から想像していたのは、せいぜい、10個か20個の、ぽつぽつ、空の天井に開いたほころびの穴。
ところが!
「すごい数! あっちから、こっちまで、ぜーんぶ、光、光、光!」
それ以上の言葉が見つかりません。
「ここにトトやモルテンがいたらなあ。ひとりで見てるなんて、もったいないわ」
ほんとに、アディはひとりぼっちでした。
風が止んだ大地は、どこまでもしんとして、どんなに耳をすませても、物音一つ、聞こえません。雪と氷のほかには、何もないし、だれもいないのです。
目がなれればなれるほど、頭の上では、星が、どんどん、数をまして行きます。ふしぎなことに、それは、しばしば、尾を引いて、キラキラ、流れて行くのです。
世界は何て広いことでしょう!
そして、アディは、何て、ちっぽけだったことか!
見上げているうちに、アディは、星の間にすいこまれて行きました。
まるで、まっさかさまに、落ちて行くようです。
「こわい・・・」
クシュンと、くしゃみをして、アディは、とほうもなく、寒いことに気が付きました。
息さえ、鼻のまわりで、こおってしまいます。
「だめだわ! ぐずぐずしていたら、こごえ死んでしまう! 早く、赤い星、見つけなくちゃ! たしか、空のてっぺんの、少し、下の方に・・・」
アディは、モルテンの言葉を思い出して、とりわけ多くの星々が集まって、青白く、けぶっているあたりに、赤い星を探しました。