ラブソング

文と絵・田村理江

100才をだいぶ過ぎたような、本当の姿になった博士は、少年の仕草でモカたちを部屋に招き入れた。トナカイが、テーブルに何かの機械を運んできた。
「おっ、カセットデッキだな」
おじいちゃんが、こっそり教えてくれた。カセットテープを再生するための機械らしい。博士は、枯れ木のような細い腕で、銀ラベルのテープをデッキにセットした。
とたんに、青年の弾んだ声が、部屋中にあふれ出した。

ルリコさんは女神 僕の女神
ずっと隣で微笑んで
ずっと隣で歩んで行こう

変な歌だ。イェーイ、イェーイとか、ビバビバとか、掛け声と
一緒に「ルリコさん」の名前が何度も、熱っぽく繰り返される。
「ん? ルリコさんって、もしかして・・・」
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田村理江 について

(たむら りえ)東京都生まれ 成蹊大学文学部日本文学科卒業。日本児童文学者協会第15期文学学校を終了。 第6回福島正実記念SF童話賞を受賞して、『ガールフレンドは宇宙魔女』(岩崎書店)を出版。 児童書の作品に『リトル・ダンサー』(国土社)、『夜の学校』(文研出版)、『魔の森はすぐそこに・・・』(偕成社)など。絵本の作品に『ふなのりたんていラッタさん』(フレーベル館)、『ハンカチのぼうけん』(すずき出版)など。 HP:田村理江のページ