モカは隣に座るおばあちゃんを見上げた。ほっぺを赤く染めている。
向かいの席のおじいちゃんも、真っ赤な顔でうつむいていた。
博士が厳かに言った。
「これこそ、ふくろうボイスです!」
「まいったな、こりゃ、プロポーズの自作の歌だ」
おじいちゃんが小さくつぶやいた。
「研究は無事に終わりました」
博士は、おばあちゃんとおじいちゃんに丁寧に頭をさげ、
「都市伝説もバカにならないもんですぞ。フォッフオッフォッ」と、
意味深に笑った。
そしてモカには、カセットテープを返してくれた。
「ねーねー、薄謝は?」
それが一番大事。博士はトナカイに目配せし、トナカイは銀のお盆に甘い甘いクッキーを5箱積んできた。
「やったぁ! ありがとう!」
帰り道、おばあちゃんとおじいちゃんは、ずっとポカンとしていた。
でもね、行きと違うのは、モカの前を歩く二人が、手なんかつないじゃっているところ。
空は夕焼け。Y字路を振り返ったら、カドノ博士の家は、もうどこが入り口かわからないくらい、黒っぽいシルエットに変わっていた。
あの日からモカは「真夜中の鏡」を試そうと、頑張って遅くまで起きている。でも、いつの間にか眠ってしまい、12時に鏡をのぞくことが、いまだにできない。
「鏡にカドノ博士が映ってるといいな」
もちろん、少年の姿で。
そうしたら、おばあちゃんとおじいちゃんみたいに、ずっと仲良しでいられそうな気がするんだ。