しばらくすると犬が出てきた。満腹で幸せそうな顔してやがる。
犬はずっとゆっくり歩いていたので、見失うことなく後をつけることができた。
首輪をつけているし、野良犬ではないはずだ。
勝手に抜け出してラーメンを食べに行ったいるということか。
飼い主がチラシを犬にやるはずないと思うし、きっと黙って持ちだしているにちがいない。
そして犬がようやく、一軒の家の前で立ち止まり、閉まっている門の下をグリンとくぐった。
ぼくは走っていって門のさくの間から中をのぞきこんだ。
犬が自分の犬小屋の前で「ずっとここにいました」というフリをして座っている。
ぼくがじっと見ているのに気づき、「おっ」と一声あげておどろいた表情をした。
家の人に言いつけてやろうかと思ったが、ぼくはふと、おかしなことに気がついた。
ここは一丁目ではない。もう二丁目に入っている。
ラーメン屋のおじさんは一丁目にしかチラシを配っていないと言っていた。
この家にはチラシは配られていないはずなのだ。では犬はどこでチラシを手に入れているのか。
「どうしてもつきとめてやる」と決意した。