翌朝、ぼくは二丁目にチラシを配った。
後をつけていった犬の家のゆうびん受けにもチラシを入れた。
きのうの犬に聞いたのだろうか。犬はぼくを見ると軽く頭を下げておじぎをした。
配り終わって店にもどると、おじさんが、
「ごくろうさん」と声をかけてくれた。そして――
カウンターには一杯のラーメン。
「アルバイト代のかわりだよ。食べていきな」
うれしくってたまらなかった。
「ありがとう!」
とさけんでカウンターに座って割りばしをいきおいよくわった。
「いただきまあす」
ズルズルとラーメンをすするぼくに、おじさんが言った。
「ラーメンが食べたい日は、一枚だけチラシを残しておくんだよ。それは特別にキミの分だからね」