動物村のことわざ会議(1/4)

文・山庭さくら   絵・にわ かずえ

動物村では、毎月一度、会議が行われます。
「今日は、何の会議だろうね」
「きっと、あれだよ。この前、サルのモンキチくんが、木になっていた実を全部食べちゃっただろう? あのことについてだよ」
「いや、アヒルのガー子さんが、池をひとりじめしてることじゃないの?」
村の動物たちが、がやがやにぎやかです。

「おしずかに! 今日は人間界におけるわれわれのイメージをどうかえていくかについての話し合いじゃ。まず、ブタ子さんの話を聞こうかのう」
年取った、議長のヤマネコおじいが、せすじをのばして立ちました。
「わたくし、『ブタにしんじゅ』がゆるせませんわ。ねうちのわからない人には、どんなにかちのあるものをあげても、むだなことのたとえだそうですが、わたくしだってしんじゅの美しさくらいわかりますわ」
動物ことわざ会議1場面
「まあ、なんてしつ礼なのかしら。でもそれなら、ネコに小ばんっていう言葉もおんなじですよ。そりゃ、小ばんがあっても、この動物村では使えませんがね。あたしについていえば『ネコにカツオぶし』っていうのもあるんですよ。ゆだんできないじょうきょうをまねくことらしいですけど。目の前においしそうなごちそうがあったら、だれでも、すぐ食べちゃわないこと?」
ネコのミー子が早口でもんくをいったあと、つづけます。

「あたしはね、山田さんちのたかしくんが、お母さんが買い物に出かけた後、かくしてある箱に入ったチョコレートをこっそり食べてるのを知ってるんですよ。それなら『たかしにチョコレート』でいいじゃありませんか。なんでわざわざネコのせいにするんでしょうねえ。まったく人間にはあきれちゃいますよ」
ミー子のことばに動物村のみんなはうなずきました。

宇都宮みどり (山庭さくら) について

宇都宮みどり(山庭さくら) 愛媛県出身。大好きな童話作家は浜田広助。 図書館での読み聞かせ、児童養護施設でのボランティア、大学病院の小児科でのボランティアでの読み聞かせを行ってきて、童話や絵本の大切さを実感。 2006年に出版した『ウータンタンのおはなし』は、大分県の夏休み課題図書に選ばれる。 その後、依頼で『不思議なコウモリ』や『シッポでさよなら』などを創作。これまで作った作品は20以上。読み終えた後に、心がほっこりする童話を書きつづけている。 HP:幸せつなぎスト

にわかずえ について

神奈川県出身。ゆうゆう絵本講座 4期生。 今人舎より出版の絵本『てをつなごう』(きむらゆういちのゆかいななかまたち)に絵で参加。 クレヨン・クレパス画を中心に制作中。