『しろさびとまっちゃん ~福島の保護猫と松村さんのいいやんべぇな日々~』
太田康介・著
KADOKAWA
児童書ではないのだが、親と子でぜひ読んで、見てほしい写真集だ。
東日本大震災から3か月後の2011年7月、福島の動物保護施設前で捨てられていた白とサビ柄の2匹の子猫姉妹がいた。この子猫を引き取ったのがまっちゃんこと、松村さんだ。
松村さんは、当時立入禁止区域だった福島第一原発20㎞圏内の富岡町で、置き去りにされた家畜やペットに給餌活動をしている方だ。
「かわいそうだっぺ」「誰も殺させねえ」という気持ちで多くの動物を保護している松村さんは、保健所で処分対象になるはずの、この子猫たちを引き取った。
本書は、「しろ」「さび」と名付けられた子猫たちと松村さんの日々の生活をまとめた写真物語だ。
しろとさびが、とにかくかわいい。そして作業服姿のこわもての松村さんといっしょに遊ぶ姿が楽しいのだ。しかし松村さんと動物家族たちが置かれている厳しい環境を思うと、ハンカチが濡れてきて仕方がない。
著者の太田さんは言う。
「この場所で多くの動物の命が失われたのは、国や原発のせいだけではないということ。『もうどうしようもない』『可哀そうだけど仕方ない』とあきらめ、動かなかった人間のせい。みんなに目の前の一匹を救う意思があれば、助けられた命だってたくさんあったと思うのです」
東日本大震災、福島原発事故で被災した動物たちに手を差し伸べることをしなかった私の心に、太田さんの言葉が突き刺さる。今からでも遅くはない、何かできることはないかと考える日々だ。
本書を手に取った方は、ぜひ松村さんや著者・太田さんの言葉をかみしめていただければと思う。
世界で「福島のラストマン」と呼ばれる松村さんのこと、そして被災者の方々を思い、できることでいいので行動を起こしてほしいと願うのである。
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