太陽がほしかった王様(4/8)

文・伊藤由美   絵・伊藤 耀

「提督、これでは、もう、西へ進めません。引き返してはいかがでしょう」
提督は目をむいて、弱気になった部下たちをしかりつけます。
「ならぬ。進路を南に取れ。陸づたいに船を進めるのだ。大陸が途切れて西の海に出る航路が見つかるまでな」
「しかしながら、提督、そんなことをしたら、いつか、大地のはしっこまで行き着いてしまい、落っこちてしまうかもしれません」
水兵たちはおじけづきましたが、提督は、がんとして、聞き入れません。
船隊は大地からおっこちないよう、そろり、そろりと南へ進んで行きました。

しばらく行くと、冷たい霧が立ちこめてきました。
その中をうろうろしているうちに、船隊は氷の海に迷いこんでいました。
たちまち、1000そうの船が氷山にぶつかって、あっという間に沈んでしまいました。
500そうは、ガチガチに凍ってしまい、進むことができません。
泣く泣く、それらに別れを告げて、やっと、西の海への道を見つけた時には、マガタの船は、たった、500そうになっていました。

伊藤由美 について

宮城県石巻市生まれ。福井市在住。 ブログ「絵とおはなしのくに」を運営するほか、絵本・童話の創作Online「新作の嵐」に作品多数掲載。HP:絵とおはなしのくに

伊藤 耀 について

(いとう ひかる)福井県福井市生まれ。福井市在住。10代からうさぎのうさとその仲間たちを中心に絵画・イラストを描き始める。2019年からアールブリュット展福井に複数回入賞。2023年には福井県医療生協組合員ルームだんだん、アオッサ展望ホールその他で個展開催するほか、県内アールブリュット作家展に出品するなど、活動の幅を広げている。現代作家岩本宇司・朋子両氏(創作工房伽藍)に師事。HP:絵とおはなしのくに