「王様、わが軍は、またまた、全めつでございます」
生き残った水兵から話を聞いて、王様は、
「ううむ」
と、頭をかかえてしまいました。
「もはや、1頭の象も、1そうの船も残ってはおらぬ。どうしたらよかろう」
すっかり、しょげかえってしまった王様は、とうとう、病気になってしまいました。
何日も寝込んで、少し、体の調子がよくなった頃、王様はベッドからはなれて、庭の、涼しい木かげに横たわっていました。
いい風が吹いていました。でも、王様の心はゆううつです。考えるのは太陽のことばかり。その太陽は、きょうも、はるかな高みをゆうゆうと渡って行くのでした。
「ああ、わしともあろうものが、なんたるふがいなさじゃ。このまま、悩みながら、死んでいくのか」
と、その時です。
「王様、私めが太陽を取ってさしあげましょう」
おだやかな声が言いました。
見ると、かたわらに一人のお坊さんが立っていました。
「おまえが太陽を取ってくれるだと」
王様は体を起こして、お坊さんをじろじろとながめまわしました。
どこのお寺でも見かけるような、ふつうのお坊さんでした。