「ふうむ、おまえにそのようなことが出来るとは、とうてい、信じられぬが。だが、まあ、試してやってもよいぞ。うまくいったら、ほうびは思いのままじゃ」
「いえ、ごほうびはいりません。こんな簡単なことでごほうびをいただいては、申しわけありませんから」
王様はむっとしました。
「わしがさんざん苦労して出来なかったことを、簡単だと申すか。それなら、すぐにやってみよ」
「はい。では、私についておいでください」
お坊さんはにこにこして、先に立って歩き出しました。
王様はあわてて飛び起き、くつもはかないまま、お坊さんのあとについて行きました。
その足の速いことといったら。あっという間にお城の門を出て、にぎやかな町を通り抜け、もう、山道にさしかかっていました。
「待て待て。息が切れるではないか」
王様が、ふうふう、言っていても、お坊さんはちっとも気にしません。どんどん、山を上って、深い森へと入って行きます。
道はとがった小石やトゲのあるヤブクサにおおわれていたので、はだしの王様の足は切れて、たちまち、血まみれになりました。
「いったい、ここはどこじゃ」
見まわしても、年ふりた樹木にさえぎられて、何一つ、見えず、暗くて、息がつまりそうです。
ウォーン、ウォーン・・・。
山犬の声が後ろからついて来ます。王様は、ぞっと、首を縮めました。
「おいおい。どこまで行くのじゃ」
この時、急に目の前が、明るく開けました。
「着きましたよ、王様」
そこは、針のようにとがった山のてっぺんでした。